安中市松井田町松井田の龍本山松井田院不動寺。
不動寺の由緒は不詳だが、最初は山上の釈迦堂近くにあったという。寛元元年(1243年)山城国醍醐寺の僧・慈猛上人が諸国巡行の際に現在地に遷したという。そのため慈猛上人を開山としている。元亀年間(1570~73年)には武田信玄が不動明王の霊験を感じ、寺領を寄進するなど武田家の祈願所として寺運も隆盛している。
山門は間口6m、奥行き3.5m、単層切妻造りの仁王門で、蟇股欄間などに桃山時代の作風を遺しているが、江戸時代初期に改築されたものと推定される。全体が朱色で彫刻部が極彩色で彩られている。
仁王門前には観応3年(1352年)に円観が造立した3基の石塔婆がある。安山岩の自然石に板碑様式の仏種や文字を刻んでおり、異形板碑と呼ばれるものである。ちなみに観応は南北朝期の北朝側の年号(南朝側は正平)。
本堂には本尊である千手観音を祀る。不動寺ではあるが不動明王は本尊ではないようだ。
不動堂に安置されている不動明王は鎌倉時代初期の作と推定される。総高26.2cmの寄せ木造り。なお、台座には元禄15年(1702年)と記した銘文があるが、像そのものは鎌倉時代の作と推定されている。
仁王門、石塔婆(3基)、不動明王像は県の重要文化財に指定されている。
龍本山松井田院の名称に関する伝承が残っており、それは松井田の地名の由来でもある。ある夜半、雷雨の時に庭の老松に大龍が登り光を放った。翌朝、老松の下に清水が湧出し、あたかも井戸の形をなしたという。
そこで神龍の出現せる因縁により龍本山、松の下に井戸のように清水が湧いたことから松井田院と号したという。この松井田が地名となっている。
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